梅雨入りと、小さな決心

カラフルな傘

窓の外から、雨の匂いがした。
湿った風と、遠くで聞こえる電車の音が、静かな休日の朝をゆっくりと運んでくる。
今年も梅雨が来た。去年の今ごろ、何をしていただろうと考える。
実家のリフォームからもうすぐ2年。あの空間も今ではすっかり「新しい日常」として根付いているようだった。
最近はあまり帰れていないが、母から届くLINEの写真には、使い込まれたミシンや、本でぎゅうぎゅうの本棚が写っている。あの家は、ちゃんと「続いている」。
ふと、自分の暮らしを見回す。
仕事から帰ってくると、消し忘れた照明と開けっぱなしの本。少し冷めたコーヒーの香り。
生活はあるが、「誰かと分け合う時間」はまだここにはない。

この前、またあの友人と会った。
今度は娘さんは一緒ではなく、代わりに「家、買おうか迷ってる」と真面目な相談を受けた。
予算の話、立地の話、教育環境の話。前回のファミレスとはまた違う、現実味を帯びた内容だった。
「家って、建てるのも大変だけど、育てるのも大変なんだな」
そう言って彼は笑ったが、その言葉が妙に印象に残っている。

家を「持つ」というより、「育てる」か。
きっとあのリフォームもそうだったのだと思う。
ただ壁を塗り替え、家具を新しくするだけではなく、そこに住む人の時間や思い出を少しずつ積み重ねていく作業。
父が古いレーザーディスクを直したいと思った気持ちも、母が新しい布を選ぶときの目の輝きも、きっとその一部だった。
今すぐ家を買うわけではないけれど、
「こういう暮らしがしてみたい」と思い描けるようにはなった。
それはきっと、一歩なのだと思う。
雨はまだ降ってこない。
洗濯物、出してしまおうかと少し迷って、結局今日は部屋干しにした。

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