甘く苦い

アイツはあっちこっちから二次会に誘われていたが「明日朝から東京行く予定があって」と残念そうに断っていた。
最後まで会場に残っていたのは俺とNと同じゼミのSとアイツ。
Nが「コーヒー飲みたい。行こ行こっ」と歩き始めたのでみんな一緒についていった。

スタバでそれぞれオーダーし、テラス席に座った。
「この花束キレイ。ありがとう」とアイツは言った。
アイツをイメージして作ったとは言えず「花束なんて初めて買ったから、お店の人に頼んだらそうなった」とごまかした。
「まさかこんな風にお祝いしてもらえるなんて思っていなかったからびっくりしたよ」
「結婚することになったら教えてね。私もお祝い贈るから」
残酷だと思ったけど、俺は「ああ」としか答えられなかった。

アイツの携帯が鳴り、アイツが「そろそろ行くね」と言った。
「じゃあ俺らも」と、改札に向かって歩き始めた。

「東京行っても元気でな」
「ありがとう」
「忘れ物するんじゃないぞ」
「アハハ!よく忘れ物していろいろ借りたよね」
「弁当忘れたときには呆れたよホント」
「その節はご迷惑おかけしました」
「今は大丈夫なのか?」
「もー!あの頃と違います!」
「電車大丈夫?」
「この時間ならまだ大丈夫」
そんな話をしているとあっという間に改札に着いてしまった。
「今日は本当にありがとう。あっ」
アイツの視線の先にいるのが結婚相手だと分かった
見たくなかった
会いたくなかった
でもこのタイミングで立ち去るのはおかしい
相手の男は誠実そうな人だった。
アイツと並ぶと美男美女カップルという言葉がぴったりで、完璧だった。
酒もアイツへの想いも一気に醒めた。

読書
心機一転

実家のリフォームを無事終えることができた。 一人暮らしをしているとは言え、それまで過ごしていた実家が …